書体デザイナー(筑紫明朝)の藤田重信(ふじたしげのぶ)さんが6月13日のプロフェッショナル仕事の流儀の主人公です。
福岡在住の私にとって、藤田さんが卒業なさった筑陽学園高校も、フォントワークス(株)のある上川端(かみかわばた)もよく知っていて、とってもうれしくなってしまいました。
なのでここでは、藤田重信(ふじたしげのぶ)さんのプロフィールや、筑紫文字(つくしもじ)という書体について調べてみました。
目次
藤田重信(ふじたしげのぶ)さんのプロフィールと経歴
- 生年月日:1957年
- 出身地:福岡県出身
- 学歴:筑陽学園高校デザイン科
- 職業:書体デザイナー
- 1975年:株式会社写研 入社(文字部 所属)
- 1998年:フォントワークス株式会社 入社(書体開発部 所属)
*筑紫書体をはじめとするフォントワークスLETSの主だった書体のデザインを担当。
*筑紫オールド明朝と筑紫丸ゴシックで、2010東京TDC賞を受賞。
・趣味:猫、バラの栽培
筑紫明朝が出来上がるまで
藤田さんの卒業された筑陽学園高校は、デザイン科があることが特徴です。
今は専門学校なども沢山なるのかもしれないし、当時とは学校のカリキュラムもかわっていると思うのですが、藤田さんの時代も私の時代も、デザイン系の高校に行きたいと思ったら、福岡ではこの筑陽学園高校か、もう1校九州産業大学という美術やデザイン系の大学の付属高校のどちらかしか選択肢がありませんでした。
そして、この筑陽学園高校のある場所は、とても環境の良い場所にあるんです。
菅原道真を祭った、大宰府天満宮(だざいふてんまんぐう)のお膝元。
こちらの高校の他にも短大や大学も点在しています。
そしてこのあたりの地域は、筑紫(ちくしorつくし)地方みたいな呼び方をしますし、万葉集の時代の福岡は筑紫と呼ばれていたこともあって、藤田さんの文字が「筑紫文字(つくし文字)」という固有名詞になたのかな?と思っています。
また、フォントワークス(株)のある上川端(かみかわばた)は、山笠で有名は櫛田神社(くしだじんじゃ)のお膝元。
藤田さんの美しい文字が、日本の美しさとかしなやかさが現れているように感じるのは、こういった福岡の歴史ある場所の影響も大きいのかなと思います。
レタリング(手で文字を書く)が得意だった藤田さんは、筑陽学園高校デザイン科に在学中に、先生に勧められて、卒業後は写真植字メーカーの株式会社写研に入社(文字部 所属)します(1975年)。
現在の印刷物のほとんどは、MacによるDTP(今は Adobe Illustrator や Adobe InDesign )を使って、作られることが普通ですが、以前は写植(印刷物の文字を組むために、使われていた技術のこと)が一般的でした。
藤田さんが入社した株式会社写研は、書体の制作およびその文字盤・専用フォント製品の販売が主で、写真植字機や専用組版システムの製造・開発を行う会社でした。
そこで、藤田さんは、書体を制作する文字部に配属。
株式会社写研は、書体の写研と言われるほど、美しい書体を数多く世に出しているのですが、1970年、80年当時は業界でナンバーワンのシェアを誇り「世の印刷物の70%が写研の書体である」と言われていたくらいです。
「写植の歴史、といえば、写研の歴史のことを指す」という記述もあるほどで、当時の主力製品が、創業者である石井茂吉氏が制作した石井明朝体です。
デザイン性を重視した書体になっており、太い細いのメリハリは文字ごとの横幅が揃っていないのですが、バランスと美しさがあり、躍動感があるとされていて、現在も多くのファンに支持されているそうです。
社会人になったばかりの20代の藤田さんは、書体よりもファッションに興味があり、当時はラルフ・ローレンなどが登場した時代で、ウエストを若干絞ったフォルムが、すごく美しいと感じ夢中になっていたそうです。
そういったトラディショナルな伝統に美しさを感じた藤田さんは、明朝体にトラディショナルを感じたのだそうです。
そうやって石井明朝体を改めて見ると、ある日突然そのスゴさに気付き、写研に置いてあった文字に関するあらゆる書物を読みあさり、ますます石井明朝に傾倒していき、石井明朝のような書体を作りたいと、強く考えるようになったそうです。
右下のアンティーク文字は、昭和を思わせる懐かしさがありますね。
「愛」MMOKL、LHM、と筑紫書体。
あらためて見ると伝説的な写研のこれらの『愛」は昭和という時代のスタイリッシュ感に漂うユーモラスな個性。それは愛くるしさを伴っているようにも思う。車やその他のデザインにも共通する。 pic.twitter.com/lOYfNaYqsZ— 藤田重信 (@Tsukushi55) 2014年6月27日
その後、地元福岡県のフォントワークス株式会社に移籍なさるのですが、そこでは、活字や写植文字のよさも取り入れた、新しい書体「筑紫書体」の明朝の制作にとりかかります。
「どれだけ時間がかかっても、いいものができるまでデザイン作業を続ける」をモットーに、何度も、デザインをやり直す作業を繰り返し、結局、筑紫明朝の制作には、なんと5年の歳月を費やすことになったそうです。
筑紫明朝(つくし明朝)
こうやって出来上がった筑紫明朝がこちら。
とっても繊細で美しいです。
藤田さんの書体の特徴は?
藤田さんは、新たな書体をデザインする時には、文字を「人」や「生き物」に見立てながら考えるのだそうです。
たとえば、「ゆ」は脚を斜めに投げ出して座る女性や「さ」は猿の顔というように。
そして、髪の毛1本分ほどの微調整を何度も繰り返しながら、文字が絶妙に美しいポージングを決めるのを待ち構えるのだそうです。
藤田さんは、それを、いろいろなポーズをとるファッションモデルに向けてシャッターを切るカメラマンのようだとおっしゃいます。
筑紫明朝を使いたい!使う方法は?
この美しいフォントは、にライセンス登録すると使うことができるようになります。
●ライセンス登録⇒フォントワークス株式会社
多くは、デザイン事務所や企業、または学校などが商用としてライセンス登録をしているようで、会員登録が必要なようですが、各店舗での購入のほか、ダウンロードで購入も可能なようです。
金額は(2016年6月の時点)、
1年コースの場合
- 入会金 3万円(税抜、1事業所)
- 年会費 3万6千円(税抜、PC1台)
3年コースの場合
年会費が、2万4千円にディスカウントされ、1年間分がサービス
使える書体は、筑紫書体だけではなくて、
- フォントワークスコレクション:345書体
- 白舟書体コレクション:51書体
- 欧文フォントコレクション:5723書体
が含まれています。
まとめと感想
ここでは、プロフェッショナル仕事の流儀に出演された、藤田重信(ふじたしげのぶ)さんのプロフィールや、筑紫文字(つくしもじ)という書体についてまとめています。
今回のプロフェッショナル仕事の流儀では、150年前に福沢諭吉によって刊行された書の手習い本に見つけた「ふ」の一文字を原型に新しい明朝体の開発に取りかかった藤田さんに密着したものでした。
どんな「ふ」が出来上がるのが楽しみです。
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